日立東大ラボ十周年国際シンポジウム インペリアルカレッジロンドンと開催 自然および生物多様性によるサステナビリティへの価値創造
日立東大ラボ 10周年記念国際シンポジウム
日立東大ラボは2026年7月6日、設立10周年を記念した国際シンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、「日立・インペリアル共同研究センター(脱炭素・自然気候ソリューション)」産学協創活動の中核をなす最先端のテーマである「自然および生物多様性によるサステナビリティへの価値創造」を軸に行われました。
会場には学術界、民間企業の環境企画部門の担当者、政策立案者など計330名の参加者が集いました。主な知見として、具体的な行動を促すためのネイチャーポジティブ(自然再興)な市場シグナルの必要性や、温室効果ガスの排出削減に向けた標準的なアプローチと比較して、地域・地方レベルでのネイチャーポジティブな取り組みが多面的な特性を持っていることなどが共有されました。
本シンポジウムは、日立東大ラボ長を務める東京大学の小宮山涼一教授と、日立製作所のシニアプロジェクトマネージャーである額賀信尾氏による挨拶で幕を開け、両氏より2016年から2026年までの活動概要が紹介されました。

基調講演では、インペリアル・カレッジ・ロンドン進化生態学准教授のウィル・ピアース(Will Pearse)博士が、「社会とビジネスに貢献する精密評価エコシステム(Accurately valuing ecosystems to benefit business and society)」と題して登壇しました。ピアース博士は、生物多様性の保護は単なる環境保全やコストではなく、ビジネス活動の効率性と競争力を高めるための手段であると強調しました。自然をビジネスに統合することは、農業における肥料の削減、洪水や火災などの自然災害からのインフラ保護、冷却効率の向上など、具体的な経済的価値を生み出します。博士は、日立・インペリアル共同研究センターの活動の一環として研究室で開発した、生態系サービスと生物多様性の程度との関係を分析・予測するためのデータベースと分析手法を紹介しました。
このツールを活用することで、きれいな空気、浄水、食料確保、炭素固定、洪水防止といった望ましい成果を確保するために必要な生物多様性のレベルに焦点を当てることが可能になります。
続いて行われた3つのトピック講演では、以下の内容が紹介されました。
• 生態系機能の推計精度を向上させるために、「種(species)」を精密に評価し、生態系モデルに組み込むことの利点。
• 海洋生物多様性を支え、漁場の提供に寄与しながら、ギガトン単位のCO2を除去するブルーカーボンの可能性。
• さまざまなセクター間の複雑な相互作用を理解し、脱炭素目標を達成するためのアプローチを導き出すためのシナリオ・シミュレーションの活用。
• さまざまなセクター間の複雑な相互作用を理解し、脱炭素目標を達成するためのアプローチを導き出すためのシナリオ・シミュレーションの活用。

パネルディスカッション
「自然および生物多様性によるサステナビリティへの価値創造」をテーマとしたパネルディスカッションでは、日立製作所主任研究員のエフレイン・タマヨ(Efrain Tamayo)博士がモデレーターを務めました。パネリストには、小宮山教授とピアース博士に加え、環境省の永田綾氏と日立製作所シニアマネージャーの門田和也氏が登壇しました。討論では、これまでの脱炭素化への歩みと比較しながら、ネイチャーポジティブ特有の課題と機会について議論が交わされました。
パネルディスカッションで提起された主な論点は、以下のとおりです。
・小宮山教授は、脱炭素分野とは異なり、ネイチャーポジティブ分野ではまだ明確な市場シグナルが形成されていないことを指摘しました。脱炭素分野では炭素価格付けなどの市場シグナルが機能している一方で、ネイチャーポジティブ分野では政策の予見可能性や価値評価手法が十分に確立されておらず、ルール形成も途上にあります。そのため、投資や多様なステークホルダーによる行動を促すためには、適切なシグナルの形成が重要であるとの認識が示されました。
・ピアース博士と永田氏は、ネイチャーポジティブには地域ごとの特性が強く反映される点に言及し、分かりやすいシグナルの創出や地域での取組を後押しする仕組みづくりの必要性を指摘しました。
・また、議論の主要なテーマの一つとなったKPIについて、門田氏は、今後の指標の明確化を見据えながら、日立としてもネイチャーポジティブを企業経営の重要課題として取り込んでいく考えを示しました。温室効果ガスの排出削減は、実施場所によらず同様の効果を持つ指標として扱うことができる一方、生物多様性は森林、サンゴ礁、草原など地域や生態系によって価値や機能が大きく異なるため、単一の指標で評価することは困難であるとの見解が共有されました。
・これに対しピアース博士は、生物多様性に関するKPIの課題への対応策として、「3つの異なる指標」を「3つの異なる時点」で測定し、「3つの異なる手法」を用いるアプローチを紹介しました。
・小宮山教授は、脱炭素分野とは異なり、ネイチャーポジティブ分野ではまだ明確な市場シグナルが形成されていないことを指摘しました。脱炭素分野では炭素価格付けなどの市場シグナルが機能している一方で、ネイチャーポジティブ分野では政策の予見可能性や価値評価手法が十分に確立されておらず、ルール形成も途上にあります。そのため、投資や多様なステークホルダーによる行動を促すためには、適切なシグナルの形成が重要であるとの認識が示されました。
・ピアース博士と永田氏は、ネイチャーポジティブには地域ごとの特性が強く反映される点に言及し、分かりやすいシグナルの創出や地域での取組を後押しする仕組みづくりの必要性を指摘しました。
・また、議論の主要なテーマの一つとなったKPIについて、門田氏は、今後の指標の明確化を見据えながら、日立としてもネイチャーポジティブを企業経営の重要課題として取り込んでいく考えを示しました。温室効果ガスの排出削減は、実施場所によらず同様の効果を持つ指標として扱うことができる一方、生物多様性は森林、サンゴ礁、草原など地域や生態系によって価値や機能が大きく異なるため、単一の指標で評価することは困難であるとの見解が共有されました。
・これに対しピアース博士は、生物多様性に関するKPIの課題への対応策として、「3つの異なる指標」を「3つの異なる時点」で測定し、「3つの異なる手法」を用いるアプローチを紹介しました。
まとめと次のステップ
一連の講演やパネルディスカッションを通じて、脱炭素化とネイチャーポジティブは相互に関連しており、それぞれの取り組みの間にはトレードオフも存在することから、両者を統合したアプローチが不可欠であることが強調されました。
本シンポジウムは、脱炭素化とネイチャーポジティブな行動の統合から生まれる価値あるビジネス機会を示す、重要な指針となりました。
得られた知見に基づき、次のステップとして、脱炭素化とネイチャーポジティブの移行プロセス、その統合、および価値創造と拡張性を可能にする手段を詳述したホワイトペーパーを作成する予定です。本シンポジウムは、産学官の志を同じくするパートナーをさらに巻き込み、エネルギーや脱炭素化からネイチャーポジティブへと活動の裾野を広げていくよう、協力して取り組むことを呼びかけて締めくくられました。


